遅くなったPCを回復させるポイントは?
~CPUとメモリ、SSDを徹底解析~
長年使ってきたPCの起動や動作が遅くなってきたとき、対処法として内部のHDDをSSDに換装したら回復しました。
こんな話をよく耳にしますし、かなりの確率で改善することも事実です。
PCの動きが遅くなる原因はいろいろあります。
その原因を正しく理解し、それに見合った対策を行わないと更なるトラブルに陥ることもあります。
本記事ではPCの動きが遅くなる主な原因であるCPU、メモリ、ストレージにフォーカスし、それらの基礎知識について解説します。
PCが遅くなる主な要因
原因不明のまま、場当たり的な対処療法で改善することもありますが、今後のことを考えるとある程度の原因を探って対応しておくべきでしょう。
ハードウェア、OSやアプリ、メモリ、ストレージについて最低限理解しておいて欲しいことを解説します。
遅くなっている要因がこれらのどこに起因するのかを見極めて、相応の対処をしていきましょう。
PCの主要なスペック・状況を確認する
そもそも自分が使用しているPCの基本スペックを正しく把握しましょう。
購入当初は理解していたつもりが、時間とともに記憶がどこかに行っている人が意外と多いです。
以下Windows10を例に説明します。
CPU、メモリの実態を確認する
自分のPCのCPUやメモリのスペックを確認します。
「スタート」(右クリック)⇒「システム」に進み、
左メニューの下方にある「詳細情報」を開くと、自分のPCの主な仕様を確認できます。
図1、図2を参照
主な仕様
・CPU;Intel Core i7-8700(第8世代)、3.20GHz
・メモリ;16GB
・システム;64ビットOS
・OS;Windows10 Pro
これで自分のPCのCPUとメモリ容量、OSを確認できました。
CPUの型番からスペックを理解する
CPUの型番からスペックの意味を正しく理解しておきたいものです。
図3にインテルCPUを例として、型番が持つ意味を表示しました。
インテルCPUの型番は、「ブランド名」「シリーズ名」「プロセッサーナンバー」「世代」「カテゴリー」などで構成されます。
第11世代(開発コード名;Tiger Lake)と、第10世代(開発コード名;Ice Lake)の「U」「Y」カテゴリーの製品名は、図の要素で構成されています。
カテゴリーは「5」が性能と省電力性を両立させた「U」、「0」が省電力モデルの「Y」であることを意味します。
「G7」「G4」などは内蔵グラフィックス機能のグレードで、数字が大きいほど高性能です。
最近のビデオ会議で、「画質が不鮮明」「動画が止まる」「音声が途切れる」などのトラブルを経験した人も多いと思います。
安定した動作をするためには、最低でもCore i3以上、できればCore i5以上のCPUを搭載したPCをお勧めします。
PCのストレージの仕様を確認する
CPUやメモリと同様に、自分のPCのストレージの状況を確認する方法は以下です。
ここから次の図4での表が見えます。
ここではC,D,E,G,H,Iの各ドライブと、それぞれの容量が分かります。
注目すべきは(ディスク0)のCドライブです。
Windows(c);464.68GB NTFS
(ブート、ページファイル、クラッシュダンプ、ベーシックデータ、パーティション)
このCドライブ(物理的にはディスク0)のストレージが、HDDかSSDかでPCの速度に大きく影響することになります。
CドライブがHDDかSSDかを調べる方法
「スタート」(右クリック)⇒「タスクマネージャー」⇒「詳細」⇒「パフォーマンス」⇒「ディスク0(C:)」
図5で確認されるように、ディスク0(Cドライブ)はSamsungのSSD(500GB)であることが分かります。
同様に、他のデバイスも確認することができます。
PCの速度に影響する要素とその対応
PCが遅くなる原因はいろいろあります。
場当たり的な対処療法で解決することもありますが、基本的な原因を把握しておかないと、再発への対応ができないこととなります。
ハードウェア、メモリ、ストレージの各要素について、そのポイントを説明します。
メモリのパフォーマンスを確認する
PCは、メモリ容量が多いほど動作速度が速いといえます。
64ビット版のWindows10では、動作環境にもよりますがOSやドライバーなどで2~3GBのメモリを使います。
従って、4GBのメモリ搭載機では空き容量がほとんどなく、使用するアプリ
によっては動作速度に大きく影響してしまいます。
「スタート」(右クリック)⇒「タスクマネージャー」⇒「詳細」
①「パフォーマンス」⇒②「メモリ」
とクリックします。
図6の表は私のPCでの確認例です。
スワップとページファイルとは
CPUはメモリが不足すると、利用頻度の低いメモリ上のデータをHDDやSSDといったストレージに退避させて空き容量を確保します。
このストレージ上の退避データを「ページファイル」(仮想メモリ)と呼びます。
更に、退避したデータが必要になったら、再度ページファイルからメモリ上に戻します。
これら退避、復帰の動作を「スワップ」と呼び、特にCドライブがHDDの場合、このスワップが頻発するとPCの動作は著しく遅くなります。
メモリ容量が足りているかを確かめる
図6でBの「コミット済み」7.2/18.3GBに注目します。
左側の7.2GBが右上Aのメモリ容量16.0GBの7割以下で、右側18.3GBもAの容量の2倍未満ならスワップの頻発はないと考えてよいでしょう。
左側7.2GBの値が、Aの実メモリ容量16.0GBを超えるとスワップが多発し始めます。
右側18.3GBは実メモリとページファイル(仮想メモリ)の総量で、左側7.2GBはそのうち現在使用中の容量です。
この例ではメモリ容量は不足していないことが分かりますが、これらの条件を満たしていないような場合メモリ容量不足が考えられます。
Windows10のPCならメモリ4GBでは余裕がほとんどなく、最低でも8GB、できれば16GBは欲しいところです。
スワップ発生の状況を調べる
図6で、③の「リソースモニターを開く」⇒「メモリ」をクリックします。
右下の「ハードフォールト/秒」のグラフでスワップの状況を確認します。
ハードフォールトとはスワップのことで、この表から発生頻度を確認できます。
図7のグラフの動きが少ない方はスワップが発生していません。
即ちメモリ容量は足りています。
図8のグラフの動きが多い方はメモリが不足し、スワップが頻繁に発生していることが分かります。
スワップはストレージの読み書きを伴うため、頻発するとPC全体の動作が重くなります。
メモリ容量が少ないPCの速度が遅い原因は、このスワップに起因することがほとんどです。
メモリ不足のPCへの対処法
これまでの説明でPCのメモリが不足していると判明したら、先ずはメモリの交換や増設で必要な容量に増やしてください。
よくメモリは変えずにストレージのHDDをSSDに交換すれば、動作速度が大幅に改善したということを耳にします。
これは一時的な対処療法で、根本的な対策ではありません。
メモリ容量が不足していると、PCの起動に時間がかかったり、アプリを複数立ち上げての画像や動画編集、ビデオ会議等の少し重いソフトを動かすと、PCが極端に遅くなったりフリーズしてしまうこともあります。
ストレージがSSDなら頻繁にスワップを繰り返すと、当然SSDの寿命にも影響します。
PCの速度アップや安定動作のために、先ずは相応のメモリに対応したうえで、その他の要因の究明と対策を心がけてください。
例えば、Windows10でビデオ会議を快適に行うためには、少なくともメモリは8GB必要で、できれば少し余裕を見て16GBのメモリが欲しいところです。
スーパーフェッチ(SysMain)サービスの無効/有効について
スーパーフェッチサービスは、PCの空きメモリを有効活用してWindows上のアプリケーションの起動などの動作を高速化するための機能です。
使用しそうなアプリケーションをあらかじめ余計にメモリに読み込んでおくため、通常のハードディスクの環境下でもアプリケーションの起動速度などが速くなります。
従来のハードディスクの場合は、有効を推奨します。
ただし、読み込み速度の速いSSD搭載のPCでは必ずしも有効にしておく必要はありません。
逆に機能が有効になっていると、PCの物理メモリを通常よりも多く使用するため、動作が遅くなるケースもあります。
SSD搭載のPCをお使いの場合は、機能の停止を試すとパフォーマンスが改善する場合があります。
仮想メモリ(ページファイル)のカスタマイズ
物理的なメモリが不足した場合、ストレージ(Cドライブ)上に作成される仮想メモリ(ページファイル)のサイズは通常PCで自動設定されます。
ただ、Cドライブの容量が極端に少なく、「仮想メモリが不足しています」のようなメッセージが出た場合、仮想メモリをDドライブに変更するなどの対応でメモリ容量を増やすことができます。
これが仮想メモリのカスタマイズです。
ここで注意してほしいのは、物理メモリが不足しているから仮想メモリの容量を増やしたとしても、スピードやフリーズ対策にはならないということです。
仮想メモリの容量を増やしているのに、パソコンが重い!固まる!という方は、物理メモリが不足しているためです。
ストレージはSSD搭載で大幅なスピードアップを
これまで主にCPUやメモリについて、PCの速度との関連の基本的な内容を説明してきました。
メモリ容量の不足により発生するスワップで、メモリとストレージとの間で退避、復帰を頻繁に繰り返すことでPCの速度が著しく低下することも理解できたと思います。
従来のノートPC内蔵のストレージはHDDが主流でしたが、最近ではSSDを搭載しているモデルが急増しています。
これはSSDがHDDに比較してデータの読み書きが圧倒的に早いことによります。
今までHDD搭載のPCで、大量のファイルのコピーやPCの起動が遅くなるトラブルも、SSDにすることで大幅に解消できます。
ただ、SSDはその種類ごとに速度差があるなど、扱う上では正しい知識が必要です。
SSDの種類とその特徴
SSDは大きく分けると、次の3種類があります。
・2.5インチSSD
・M.2 SATA SSD
・M.2 PCIe SSD
「2.5インチSSD」は2.5インチHDDと同じ様なケースに入ったもので、従来のHDDからの交換用として手軽に使用できます。
「M.2 SATA SSD」は基板タイプのSATAインターフェイス対応で、基本的な速度は「2.5インチSSD」と同じです。
「M.2 PCIe SSD」は基板タイプでPCIe(ピーシーアイエクスプレス)に接続され、他のSSDと比較して圧倒的に速度が速いのが特徴です。
以前は自作PCで使われることが一般的でしたが、最近ではノートPCにも搭載されることが多くなってきました。
SSDとHDDの速度比較
図9は、各種SSDと従来のHDDの速度比較した図です。
この図9からもわかりますが、2.5インチHDDの読み出し速度は最大150MB/秒程度なのに対し、
PCIeタイプのSSDの速度は約45倍の7000MB/秒とけた違いです。
2.5インチとM.2 SATAタイプのSSDは、いずれも最大560MB/秒程度で、これもPCIeタイプとの差は大きく、PCIeタイプが特に早い速度といえます。
各種SSDの特徴
次の図10はHDDと3つのSSDの特徴をまとめたものです。
SSDは外部からの衝撃に強く、フラッシュメモリーのチップにデータを記録するので、機械的な駆動部がなく故障しにくいデバイスです。
消費電力が小さく、HDDと比べて半分以下の電力で動作するため、ノートPCのバッテリー駆動時間を延ばすことにも貢献しています。
旧いPCをSSDに交換して大幅なスピードアップを
PC内蔵のHDDをSSDに交換するだけで、大幅なスピードアップを体感することができます。
SSDに交換するだけで、Windows10の起動時間は半分以下に短縮し、アプリも瞬時に起動します。
また、ここ数年でSSDの価格も大幅に安くなり、導入しやすくなりました。
少し旧いPCで、交換可能な内蔵HDD搭載機であればSSDへの交換をお勧めします。
ノートPCなら2.5インチHDD ⇒ 2.5インチSSDへの交換が一般的です。
注意したいのは現在のHDDの容量以上のSSDにしてください。
この交換のことを換装といいますが、具体的な換装方法についてはWeb検索でたくさん出てきますのでそちらを参照してください。
まとめ
PCの速度に関係する要因は他にもたくさんあります。
原因を特定し、対策するにはそれなりの知識や経験を必要とする部分もあります。
本記事ではその中でも特に重要なCPU、メモリ、ストレージについてその基本的な項目を解説しました。
何らかの参考にして頂ければ幸いです。
PCの速度に関して、凄く詳しい解説で分かりやすいと思いました。私のPCはNECの「LAVIE」ノートパソコンです。一昨年PCの速度が極端に遅くなってしまい。地元のO社OBでPCに詳しい人がいて、相談したらHDDをSSDに変えれば早くなるということで、彼に交換して貰いました。お陰様でかなり早くなって使いやすくなっています。今回、このブログで自身のPCの仕様を確認したら、メモリが4.0GBしかなくて、コミット済みが4.0/5.5GBとなっていて、メモリ容量が少ないことが判明しました。現状の使い方ではメールやインターネットで調べるくらいなので、さほど使用上の支障はないと思いますが、それでもメモリ容量はアップした方が良いのでしょうか?教えて下さい。
使用しているOSが64ビット版のWindows10であれば、メモリ4.0GBでは少な過ぎます。最低でも8GB、できれば16GBへの容量アップを推奨します。
コミット済が4.0/5.5GBだとスワップが多発していると思います。HDDをSSDに換えたことでいくらか早くなっていると思いますが、複数のアプリを起動したりオンライン会議のZoom等の利用では画面フリーズなどの症状が出る可能性があります。
ただ、メールやネット検索くらいですと体感速度は感じにくいかもしれません。
早速の回答を有難うございました。やはりメモリ容量不足ですか・・・早々にメモリ容量アップの検討をします。