突然壊れた外付けHDDのデータを救出する
本レポートは少し以前に記録したものですが、最近でも同様な事例が発生し色々と相談を受けることがあります。
同じようなトラブルに遭遇した場合、本レポートが少しでも参考になればと思っております。
文中、製品やアプリの名称は一部のリンク先を除き、基本的には当時のまま掲載しています。
目次
はじめに
3年半程使用していたBuffaloの外付けハードディスクLinkStation(NAS)が、突然PCから認識されなくなり、保存されているデータが全くアクセス不能となった。
バックアップしていないデータもあり、何とか救出をと考えたものの成す術も無く残念至極の状態が続いていた。
Buffaloのコールセンターにも相談したが、修理に出しても“個人情報保護”の観点から、
修理する前にHDD内部のデータはすべて抹消してから作業にかかる、とのことであった。
後はHDDレスキュー専門業者に依頼して、最悪の場合数10万円規模の費用で救出を試みることくらいしか方法は無いのかもしれない。
そんな折、HDD内部のデータをLINUXで読み取る方法にいちるの望みを与えてくれるような情報を耳にし、試みたところ、見事にデータのレスキューに成功した。
まさに感動ものであったこの経験をレポートする。
もし本レポートを参考にして対応をされる場合、あくまでも自己責任の範囲にてお願いしたい。
NASのトラブル発生
Buffaloの外付HDD、LinkStation LS-320GL(320GB)は3年余り前に購入し、
LAN接続で24時間電源を入れっぱなしの状態で使用してきた。(図-1)
このHDDは過去の多岐にわたるデータ類や、写真、動画等のいわゆる保存用の外部ストレージとして使用していたが、断片的なバックアップしかとっていなかった。
(本当の意味でのバックアップの重要性を認識できていなかった。)
2010年4月某日、LS-320GLが突然アラームを発生
ブザー断続鳴動とError LEDが点滅し、PCからLAN上のHDDを全く認識できず、データの読み書きが出来なくなった。
Buffaloのコールセンターに相談しての回答
・Buffaloに現品を送り、HDDの修理をすることは可能。
・但し、内部のデータは修理の前に消してしまうのでデータの復旧は不可能である。
(個人情報保護の問題から、そうせざるを得ないとのこと)
・データの復旧を試みるには、別の専門業者に依頼するしかない。
(仮に復旧できたとしても、費用は数10万円以上のこともある)
⇒ これらの状況から、修理に出すことよりもデータを復旧させる方法を探ることとした。
NASデータ救出へ向けての検討
PCショップ店頭での相談やWebでの記事を色々探していると、同じようなトラブルを抱えている人が意外と多いことを知った。
ハードディスクそのものがクラッシュしている場合は難しいが、それ以外の原因であればデータ救出の可能性があることも何となく分かってきた。
LS-320GLから内部のHDDを取り出し、SATAのインターフェースを介して直接データを読み出すことがその方法である。
但し、BuffaloのHDDはWindowsでは直接読み出すことは出来ず、Linux上でのアクセスが必要であることが判明した。
NASデータ救出手順の概要
データ救出の方法については試行錯誤を繰り返したが、結論としては次の手順で行い救出に成功した。
1)LinkStation;LS-320GLを分解し、内部のHDDを取り出す。
2)HDDのインターフェースSATAからUSBへの変換用のケーブルを用意する。
3)LinuxマシンのPCを構成し、Linux-PCを起動する。
(ここでは、OSと多数のアプリケーションがまとめられたLinuxディストリビューションの
「KNOPPIX」(クノーピクス or ノピックス)というフリーソフトを使用した。)
4)上記2)で構成したHDDのSATAからの変換ケーブルを、Linux-PCのUSB端子へ接続する。
5)Linuxを起動したPC上でHDD内部のデータフォルダを探し、Linux-PCの任意のメモリエリアにデータをコピーすれば救出完了である。
NASデータ救出に向けての準備をする
LinkStation;LS-320GLから内部のHDDを取り出す
(図-1)のLS-320GLに内蔵されているHDDを取り出すため、慎重に分解して行く。
そして(図-2、3)に示すようなSeagateの3.5インチHDDのインターフェースであるSATAの電源とデータ用のコネクタを外せば、図-2,3のHDDを取出すことが出来る。
分解の際には衝撃や静電気には充分な配慮をし、HDDのデータを壊さないよう慎重に作業を進めたい。
Seagate HDDの概略仕様
・Barracuda 7200.10
・320Gbytes
・ SATA
・+5V 0.72A , +12V 0.52A
SATAからUSBへの変換ケーブルを用意
HDDからPCへのデータ読み出しのために、(図-4)のようなSATA⇒USBへの変換ケーブルを用意する。これはHDDのSATAのデータ転送と、電源供給の両方のコネクタを備えており、更にSATAデータをPCとインターフェースさせるためのUSBコネクタで構成されている(図-5)。PCショップで1,500円位で手に入る。
他にもHDDケース等の名称でも売られているが、機能としては同じである。
Linux-PCを構成する
現在私の所有しているPCは、Windows7他の3台である。
これらのPCのいずれかのOSをLinuxに変更し、HDD本体からのデータ読み出しに使用することとする。
Linuxマシン構成の方法
下に示すように色々な方法がある。
①OSをWindowsからLinuxにインストールしなおす。
②Windows上でインストールし、いわゆるバーチャルなLinux環境を構成する。
(フリーの「Ubuntu」は日本語化された代表的なソフト。)
③LinuxのOSやアプリを書き込んだCD(DVD)を用意し、PCパワーオン時のブートで読み込ませてLinux環境を構成する。
等々あるが、今回は③の方法を選択した。
①は現在のWindowsOSや既存データを削除してしまうことになり、今回は不採用。
②はPCの負荷も若干重くなり、現Windowsへの影響も多少気になり、今回は採用しなかった。
③はPC起動時に、CDを入れて起動すればLinuxに、CDを抜いて起動すればWindowsと、シンプルで分かりやすい。今回は日本語化された「KNOPPIX」ソフトを使用。
「KNOPPIX」起動ディスクCDの作成
「KNOPPIX」の正体は、DebianベースのLinuxディストリビューションで、Linux_OSなので、ファイルシステムは基本的にWindowsとは異なる。
しかし「KNOPPIX」は、ファイル形式がFAT、FAT32、さらにNTFSの読み書きにも対応しているので、実質Windowsのデータを操作できる非常に便利なソフトと言えよう。
DVD版はファイルサイズが3.8GBと膨大なため、ここではCD版を前提にまとめて行く。「KNOPPIX 6.0.1CD日本語版(LCAT対応)600MB」と書いてある場所のファイルをダウンロードする。
ダウンロードしてきたファイルはそのままISOイメージファイルなので、ISOイメージファイルの書き込みに対応したライティングソフトを使って、「KNOPPIX」の起動CDを作成する。
<参考> ISOイメージングファイルの書き込み詳細
PCのBIOSを書き換える
PCのBIOSを起動し、Boot Device Priority即ちBootの優先順位を以下に変更する。(通常はHDDが最優先に設定されている。)
1st CDROM(CDまたはDVDドライブ)
2nd HDD(ハードディスクドライブ)
(図-6)
この設定により、「KNOPPIX」CDを挿入してPCの電源をONすれば「KNOPPIX」によりLinuxが起動し、CDなしで電源ONすれば通常のWindowsが起動する。
以上でデータ救出の為の環境が整備されたことになる。
NASデータ救出の具体的な手順
先に救出手順の概要を述べたが、その具体的な内容を以下に解説する。
ハードウェアを準備する
①NASを分解して取り出したSeagateのHDD(図-2,3)に、SATAからUSBへの変換ケーブル
(図-5)をセットする。
②AC100Vから変換されたSATAへの電源をアダプター経由で接続する。(図-7)
「KNOPPIX」を起動する
①先に作成した「KNOPPIX」の起動ディスクCDを、PCのCD(DVD)ドライブにセットしてPCの電源を入れる。
②BIOSの変更でブートの優先をCDドライブに設定してあるので、CDから「KNOPPIX」が自動的に起動される。
ブートがうまく行けば先ず(図-8)の画面が現れ、自動的に起動は続行される。
③「KNOPPIX」の起動が完了すると、(図-9)の画面が表示される。
これでLinux-OSの「KNOPPIX」が起動した状態となる。
各種ファイルのデータ読み出し、救出に成功!
①最初は若干の戸惑いはあるが、「KNOPPIX」起動画面から内臓HDDや外部HDDのデータは、Windowsと同じような感覚ですぐに読めるようになる。(図-10)
先にも触れたが「KNOPPIX」はFAT、FAT32、さらにNTFSの読み書きにも対応しているので、ほとんど問題はなく各ファイルへアクセスできる。
②問題のNASのHDDに変換ケーブルをセットした状態(図-7)で、USBコネクタをPCに接続する。Windowsと同じようにHDDがPCに認識され、待望のデータはすべて破損も無く残っていた。
③HDD内の救出すべきファイルを、容量に余裕のある外付けHDDにでもドラッグ&ドロップでコピーする。
この一連の作業で、あきらめかけていたデータが、すべて読み出しに成功した感激の瞬間である。(図-11)
「KNOPPIX」への補足
①「KNOPPIX」上ではハードディスクは物理単位ではなくパーティション単位で表示される。この時ハードディスクに内蔵されているリカバリー領域などもWindows上からは隠れてパーティションが見えないが、「KNOPPIX」上では見えることになる。
②データを移す際もWindowsでのフォルダの移動とほとんど同じ感覚で行う。
まずデスクトップ上のパーティションから救出したいフォルダやファイルを探し出す。「KNOPPIX」上では、隠しフォルダや隠しファイルも通常のフォルダ・ファイルと同じように表示されている。該当するデータを見つけたら、2つのウィンドウを開いた状態で、マウスでドラッグ&ドロップすればよい。
③「KNOPPIX」を終了するときは、左下のスタートアイコンからLogoutを選びShutdownをクリックすれば「KNOPPIX」を終了する。(図-12,13)
「KNOPPIX」の終了を待っていると、最後にPlease Remove CDとメッセージが出るのでEnterキーを押して終了する。
おわりに
今回の一連の作業で何とかLinkStation(NAS)データを救出することが出来た。このことは感動ものであった。
しかし冷静に考えてみると、今回のトラブルはNASのHDDがクラッシュしていた訳でもなく、
要するにNASのファームウェアが壊れているということなのであろうか?
原因に対してはいささか腑に落ちない状況ではあった。
反省すべきことは、HDDのデータバックアップの必要性は理屈では分かっていても、毎日は実行できていないのが現実であった。
おそらく多くの人達も似たような状況にあるものと思う。
補足、新たに設置したNAS
今後同じ失敗を繰り返さないため、新しいLinkStation(NAS)(BUFFALOの
LS-WXL/R1シリーズ2.0TB、RAID対応)を購入し設置した。(図-14)
HDDの使用モードを“RAID1”に設定し、常に1TBずつのHDDがミラーリングされる状態で使用している。
これは万が一どちらかのHDDが故障しても、他の一台のHDDのデータは確保される。(2台同時に故障する確率はかなり低い。)1TBずつセパレートされたHDDの交換も簡単に出来るよう構成されている。
また、このLinkStation(NAS)は“PC連動電源機能”や、Webアクセスで外部からデータアクセスが出来る等、色々な機能を持っており、我が家のPCデータを一括して保存するには快適なシステム構成が出来たと思う。
以上備忘録的に書き留めていくうちに、少々くどい記述となってしまった。
本レポートが、大切なデータが入っているHDDの故障で困っている方々へ、少しでもヒントとなり役に立つことが出来れば幸いである。